墨染に咲かぬ桜もこの春は 心あればや露けかるらむ ~ EEL Products/ サクラコート dorosome & sumisome

深草の野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染に咲け

古今和歌集に収められたこの歌は、平安時代の歌人である上野岑雄(かむつけのみねを)が友人であった関白・藤原基経の死を悼み詠んだと云われています。

伝説では、歌に呼応して深草山(現在の京都市伏見区)の桜が喪に服すように薄墨色の花を咲かせたとか。

勝手な想像ですが、今回ご紹介する二品、とくに後者は、この物語に触発されて生まれたのではないでしょうか。

EEL Productsの名品サクラコートをベースに、いつもの馬布をどっしりした肉厚なヘリンボーン生地に置き換え、仕立てたのち製品ごと泥染めを施した”dorosome”、

そして、同素材で仕立て、やはり同じく製品を墨で染めあげた”sumisome”。

ともに枯れたような味わいで、もののあはれが具現化されたようです。

生地は染めの加工によってぐっと目が詰まり、着倒した古着のような侘びしさも漂わせています。

目に眩しい明るさだけが春ではありません。
かの清少納言も夜が明けて白んだ空を横切る紫色の雲のさまを賛美したように、静かで、けれど仄暖かな趣もまた佳し、それを教えてくれるコートです。

オンラインストアはこちらです→ dorosome/ sumisome


Ich komme schon durch manches Land, avec que la marmotte ~ Aiguille

昨年登場しご好評いただいた英国製バッグブランドAiguille。

約一年ぶりのご紹介ということで、まずはこの読みづらすぎる名前の発音からおさらいを。

1987年にAdrian Moore氏によって設立、当初は自宅の屋根裏部屋で製造していましたが、

幾度かの移転を経て、現在の店舗を併設した工房に落ち着きました。

(画像はAiguille公式サイトより)

この店舗兼工房を構えるStaveley Mill Yardは湖水地方中心近くに位置する複合商業施設で、さまざまな地元産業、商店などが一緒に営業しているようです。

こちらの紹介動画の0:35あたりからAiguilleも登場していますよ。

さて、そんな小規模なメーカーであるこちらの魅力は、シンプルさ、頑強さ、そして最先端のテクノロジーを駆使する他の大手ブランドがとうに失ってしまった、素朴な雰囲気です。

今回は昨年特にご好評いただいた二型が入ってきておりまして、どちらもAiguilleらしさを存分にお楽しみいただけます。

まずは小ぶりのデイパック”MARMOT”。

継続色ブラック、グレー、パープルに加え、ネイビー、オリーブ、ウッドランドカモが新たに加わり、一層賑やかになりました。

見たままの簡素な構造で、それほど厚みのないナイロン生地を用いていることもあり、とても軽量です。

これもまた簡素ながら、きちんとウェストハーネスが付属しているのは、登山家が立ち上げたアウトドアギアブランドならでは。

ときおり生地に製造時につけた目印や謎の跡が残ったままなのは、ご愛嬌ということで。

英国製とは思えないほど背面が短いため、小柄な男性や女性にもお薦めです。

もう一型はウェストバッグ”CONTOUR”。

こちらはコンパクトなサイズにして複数のポケットにキーフックを内蔵、機能性を重視したデザインとなっています。

両モデルとも、プラスティックのバックルには強度に定評のある米国ナショナル・モールディング社製品を採用。

実はAiguille、こうしたパーツの品質に一切の妥協がありません。
業界をリードするような最新技術や目を見張るハイテク設備はなくとも、本質的な部分でとても生真面目で、だからこそいつまでも価値を持ち続ける、そんなブランドです。

オンラインストアはこちらです→
MARMOT ブラック/ グレー/ パープル/ ネイビー/ オリーブ/ ウッドランドカモ
CONTOUR ブラック/ グレー/ パープル/ ネイビー/ オリーブ/ ウッドランドカモ


白い巨塔 ~ blanc/ west-point(wide)

2015年春の登場から5年目を迎え、人気が衰えるどころかどんどん高まる評価、そしてリピーター様の続出によって、毎度入荷のたびに完売してしまうblancのワイドパンツ。

予定より若干遅れましたが、今季も無事やって参りました。

光沢のあるウェストポイントで仕立てられ、細部まで考え抜かれた逸品です。

この世紀の名品に、新たな仲間が加わりました。

以前登場した限定モデルのデニム同様、「それって商品名と違うのでは…」と疑念を抱きつつもその確かな魅力に唸らされてしまう、エクリュカラーのチノクロスを採用しています。

経糸に14番手単糸、緯糸に16番手単糸を用いて左綾で織りあげ、奥行きのある綾目とこまかなネップが豊かな表情を見せてくれます。

しっかりと厚みがありながら自然な弾力性を備え、穿き心地に優れているのも特長です。

外からは見えない部分まで丁寧にデザインされており、

ロールアップしたときに外からロックステッチが見えない袋縫いのサイドシームは、このパンツの最大の特徴と断じても過言ではありません。

全色とも入荷前から予約が入っていますゆえ、今回もまたじきにみな巣立って行ってしまうのではと思われます。

気温にあまり左右されず楽しめるパンツですので、是非今のうちに。

オンラインストアはこちらです→ エクリュ/ ベージュ/ ネイビー


虹の彼方に ~ Handwerker ASEEDONCLOUD/ HW over coat

今季はスプリングコートが豊作で、素敵な商品が続々と届いています。

昨年ご好評いただいたHandwerkerのコートも、春らしく軽やかな装いで再登場となりました。

以前ご紹介したHW editor’s jacketと同じ生地で仕立てられており、一見無地のライトグレー、ネイビーに見えますが、よく見ると細かい千鳥格子。

最高級のアメリカ綿であるスーピマコットンを用いて高密度に織り上げ、シリコン撥水コーティングを施した、軽快な生地です。

作業の際にジャケットの上から羽織れるよう設計されているなど、あくまでもワークコートを基調としたデザインは、見た目の印象だけでなく実際に機能的。

襟裏にはハンガーループが設けられ、脱いだ後は見出し画像の如く吊り下げることができます。

HW editor’s jacketとは対照的に、裏地、内ポケットを省いたシンプルな構造で、ラグランスリーブの袖付け部分には綺麗にパイピング処理が施されています。

そして両サイドに設けられた容量たっぷりの大型ポケットが内ポケットの不在を感じさせません。
且つその右側に於いてはポケットの中にさらに小さなポケットが仕込まれ、内容物を仕分けできるようになっているのも小憎いですね。

裾のスリットは、コートを羽織ったままここから中に穿いたパンツのポケットに手が入れられるよう、動線を計算して設計されています。

3月頃からは下にジャケットや中綿ものなどを入れて、そして暖かくなれば薄手のものの上にヒョイっと纏うだけ、と、春を通して楽しめる一枚です。

店頭でもご覧になる方が多く、実際にすでに動き始めてきています。

グレーは女性や小柄な男性向けのSサイズもご用意しましたので、気になる方は是非店頭にてお試しください。

オンラインストアはこちらです→ グレー/ ネイビー


飢狼伝説 ~ EEL Products/ 画廊シャツ

いつぞやのブログでも触れていますが、店主は高校生の時分に美大を志望していた時期がありまして、しかし実力も根気もまったく足りていなかったため早々に挫折、結局は普通の四大に進学致しました。

そんな次第で美大生あるいは美大卒、もっと言えば芸術家全般に対してコンプレックスに近しい屈折した羨望と尊敬の念を抱き続けております。

この感情を搔き乱すかの如くEEL Productsから届いたのが”画廊シャツ”です。

テレピン油の匂いに満ちたアトリエに籠る気難しい絵描き、あるいは彼を理解する画廊のオーナー?
このシャツから湧きだす聯想空想妄想は止まりません。

素材は細かい千鳥格子柄のコットン生地。

やや厚みがあってコシが強く、そしてなめらかな質感に驚かされます。

ロングシャツは腰から下の運動性をどう確保するかがひとつの問題ですが、このシャツは両脇に深いスリットを入れることでそれを解決しました。

こうして眺めてみると、その名が示すアートに限らず、退廃的な文士の風情もどこか感じられる気もします。

…いや、こんな陳腐なイメージの羅列など不要でしょう。

かのヨーゼフ・ボイスは言いました。
「人はだれもが芸術家である(Jeder Mensch ist ein Künstler)」と。

オンラインストアはこちらです


おまえの涙も 俺を止められない ~ HAVERSACK/ ハウンドトゥースリネンハンティングコート

こんなに軽くて薄いのに、そこから放たれるどっしりとした色香といったら、むせて止みません。

昨シーズンもご好評いただいたHAVERSACKのスタンドカラーコートが、素材を変えて、この春も濃厚な世界に我々を誘います。

素材は表、裏ともにリネンです。

表のハウンドトゥース柄の生地は、敢えて緩く織ることで、たっぷりとしたAラインと相まって流動的な質感を引き出しています。

裏地は目の粗いリネンガーゼを。

その独特な風合いもさることながら、軽さ、涼しさも魅力ですね。

薄い生地のコートゆえ、背面の大振りのゲームポケットには、しっかりと負荷のかかる箇所には補強が施されています。

左右どちらからも収納可能なつくりです。

ブログでのご紹介を前に、インスタグラムや店頭での反応がたいへん大きく、すでに残すことろL一着のみ(2/5時点)となりました。
このサイズは身長180cmオーバーの方にお薦めです。

着こなしとか着回しとか以前に、ただこれを羽織るだけ世界が完結する、そんな圧倒的なコートにはそうそう出会えることはないでしょう。

是非春本番となる前に、お手元へ。

オンラインストアはこちらです


もうすぐ春ですね ちょっと気取ってみませんか ~ CURLY/ SINGULAR ZIP BLOUSON

昼はさすがに季節外れの暖かさだったとはいえ、すっきりと晴れてたいそう気持ちの好い一日でした。

あす明後日あたりからまた寒くなるとは聞いていますが、もうそれでも春の加速はだれにも止められません。

スプリングコート、薄手のジャケット、そしてこんな軽いブルゾンも気になってきます。

CURLYといえばカットソー、もちろんこのブルゾンも然り。

海外のラグジュアリーブランドからの注文も請け負う国内のハイレベルな工場で編まれたハイゲージの生地は、ただのポリエステルのジャージーとは言い難いほど品の佳い光沢を湛えています。

それでいて伸びやかさは抜群ですので、袖を通せばふふっと笑みがこぼれることでしょう。

要所要所の裏はコットンの(主に迷彩柄の)生地で補強され、ふにゃふにゃになりすぎない加減が保たれています。

艶を消したダブルジップは過度な主張をせず、ただ黙々と職務を遂行します。

上記の如くハイテクノロジーの恩恵を受けつつも、デザインのベースはクラシックな英国調ブルゾンです。
たとえばこの腰のアジャスター、機能的でありつつも敢えて最先端の素材や技術を用いないこの匙加減が実に心憎い。

毎シーズンすぐに完売してしまうCURLYのブルゾンの例に洩れず、このSINGULAR ZIP BLOUSONもより春が近づけばどんどん減っていくであろうことが予測されます。

気になる方は、どうぞお早めに。

オンラインストアはこちらです→ ブルー/ ブラック


愛しい 壁際の花よ ~ BRAASI INDUSTRY/ GEORGINA

優しく照る空の下2月が始まりました。

この麗らかな陽気に合わせて、人気のBRAASIのトートバッグGEORGINAが入荷してきています。

しかも今回は当店が別注をかけた特別仕様、さらにそれを3パターンご用意しました。

本体とウェビングテープの配色を当店にて指定しただけではありません。

ライニングにはいつもの素材ではなく、プラハの若き気鋭デザイナーEva Hanzalováが手掛ける壁紙ブランドPaper Joeの生地を採用し、既存品とは一味もふた味も違う仕上がりとなっています。

ではそれぞれご紹介していきましょう。

まずはこちら。

艶のあるブラックの本体にサルビアブルーのテープ、ライニングには”Greased Lightning”と名づけられた柄を組み合わせました。

90年代のスポーツバッグの匂い漂う配色の隙間から、想像力を掻き立てる抽象的な異界が覗きます。

お次は、ネイビーボディにローズグレーのテープ、ライニングは”Patisserie”。

体重とカロリーの出どころについて考察する女の子の詩がそこには捧げられています(Paper Joeのデザインはきわめて観念的で、実に説明しづらいのです…)。

花柄もモノトーンならば、パティスリーの名のわりに甘すぎることもなく、男性でも使いやすいのではないでしょうか。

最後は真っ白な外面と、そこに映える牡丹柄”Peony”。

家の中にはドライバー、靴墨、コンタクトレンズなどがあるのに、じゅうぶんな量の牡丹はないのでは?というEvaの素朴な問いかけが込められています。

こちらは先のPatisserieに対してとてもキュートな出来栄えとなりました。

大人から子供まで、特に女性にお薦めです。

どれも自信作ですので、お好みに合わせてお選びいただければ幸いです。

新しい季節のお供に、是非とも新しいバッグを。

オンラインストアはこちらです→ ウェットブラック×グリーストライトニング×サルビアブルー/ ネイビー×パティスリー×グレー/ ホワイト×ピオニー×ホワイト


編集王 ~ Handwerker ASEEDONCLOUD/ HW editor’s jacket

一般的に「編集」といえばさまざまな材料をもとに書物やメディアにまとめることを指しますが、当店のような職種も一種の編集だと自分自身では考えています。

服など商品を取り揃え、自身のフィルターを通して店舗というフォーマットに落とし込み、発信する。
アウトプットの形は違えど、本質的には同じものではないでしょうか。

とはいえ、他業種としての編集の仕事は外野から見ることしかできないわけで、編集者と呼ばれる方々がいったいどんな作業を日々行っているのか、フムと興味をそそられる次第であります。

このジャケットを手にしたとき、そんなよしなしごとが頭をよぎりました。

先シーズンから始まったHandwerkerの試み、ある特定の個人の仕事着シリーズの第二弾、HW editor’s jacketです。

今回は『暮しの手帖』誌編集の矢野太章氏へのヒアリングに基づき、編集者のための服として設計されています。

外側の胸ポケットを省いたミニマルな印象。

しかしその裏側には多くの携行品を収納できるギミックが隠されています。

胸内ポケットにはペン(画像のペンは店主私物です)、ノート型付箋、モレスキンのノートが、

裾内ポケットにはICレコーダ、名刺入れ、A5ノート、携帯電話が収納可能と、

日々の業務から取材まで対応できる機能的な一着となりました。

裾ポケットのA5ノート収納部はメインポケットとしての機能も兼ねており、

外側からもアクセス可能な構造です。

グレー、ネイビーともにスーピマコットンを用いて高密度に織り上げシリコン撥水コーティングを施した生地の一枚仕立てとなっており、急な雨にも耐え、且つひじょうに軽快な着用感なのもうれしいところ。

なお、この生地は一見無地に見えますが、実は細かい千鳥格子柄となっています。

このように編集のお仕事に特化した構造ではありつつ、その枠に収まらない、豊かなジャケットです。
編集者の方はもちろん、そうでない方も是非一度お試しください。

オンラインストアはこちら→ ネイビー/ グレー


イエロー・マジック ~ CURLY/ BRIGHT COAT

早いもので、瞬く間に一月が終わろうとしております。

店内の様相もだいぶ春めいて、ご来店されるお客様の意識もすでに次の季節へ移っているのを感じます。

CURLYから届いたこの圧倒的な春の息吹をご紹介するにはちょうどいい時候ではないでしょうか。

BRIGHT COATの名の通り、鮮やかな黄色が眩しいスプリングコートです。

カットソー専業ブランドらしく、ツイルのように見えて織り柄をジャカードで表現した肉厚の編地で仕立てられています。

度を詰めて編んだ上に高温処理を施して収縮させ、どっしりとした硬い質感を出しながらも、編地ならではのかろやかな伸びのよさを維持した、実に面白い生地です。

裏地には表情豊かなコットンの平織り布を。

裏には左右それぞれに内ポケット。

表面両脇のフラップ付きポケットにもハンドウォーマーポケットが隠されていました。

襟にはチンストラップが付属し、襟を立てて初春の冷たい風から首を守ることもできます。

ちなみに、襟の後ろにはハンガーループも設けられています。

と、見た目はこれ以上ないくらいに春を感じさせながらも、実はかなり早い段階からしっかり対応してくれる、頼もしいコートとなっています。

春の始まりは光の強さと裏腹に、まだまだ冬の残像を引きずって肌寒いもの。
そんな気持ちと肉体の鬩ぎあう時期には最高の一枚ですね。

オンラインストアはこちらです